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2005年 10月 06日
もう一度、逢いたい
鳴海 章 / 実業之日本社 ISBN : 4408533912 スコア選択: ※※※ 十八、九の頃には、この恋だけが一生に一度の濃いと思い定めることがある。生涯この相手と一緒にいられたら、どれほど幸せだろうと考える。が、その頃の恋を成就させられる人間は少ない。《もう一度、逢いたいp97》 ----------------------------------------------------------------- その想いが、二度と逢えぬ人を 「この世」に引き戻す…… 乱歩小作家が放つ、初のホラー小説集!! 《単行本帯より》 ----------------------------------------------------------------- タイトルに惹かれて手に取った。 もう一度、逢いたい 言い換えれば、「もう二度と逢えない」人を扱ったお話。 死後の世界について教えてやろうか。……生前の知り合いや親兄弟が思い出してくれるとき、ただその時だけ一点に凝集して存在することができるようになるんだ、と。 だから、時々思い出して欲しい。あんな奴が生きていた、と。あいつも友達の一人だった、と。 時々。 そう、時々でいいから。(目が覚めたらp26) 今、とても会いたい人がいる。 ひどく具合が悪いと聞いていて、それからずっと連絡が取れずにいる。 もう一度、逢いたい 単にネットから足を洗っただけかもしれない。ネットだけでなく、リアルも含めたすべてのことから手を引いてしまったのかも知れない。わたしと連絡をとることだけをやめてしまったのかも知れない。 わたしの方はいつも、もう一度逢いたいと思っていて、だからこの本を手に取ってしまった。そして、もう二度と逢えないのかも知れないな、と思ってしまった。 いつも、自分の今の状況にぴったり合う話を選んでしまうから。この本が示唆するものを、心のどこかで感じているのかも知れない。 思い出すことで、その人はこの世に存在することができるようになる。そうであるならば、わたしの会いたい人は今もこの世に存在する。わたしはまだ忘れていないから。わたしの中に存在しているから。 もし、自分の愛する人が亡くなってしまったら、たとえ幽霊であれ、もう一度、逢いたいと思うのが人情ではないか。結局、幽霊を見るのは、生きている人間なのだ。錯覚、思い過ごし、恐怖の反映などに、切ない思慕も加えたい。(あとがきp269) それでも、もう一度、逢いたい、と思う。 記憶の中にあるだけでなく、たとえ幽霊、幻という形であってもいいから、逢いたいと思う。
by sya_sya
| 2005-10-06 16:15
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